君が見つめる世界
2009.12.12 |Category …小説~亜久野SS~
眼鏡ってかけてます?
私はかけてます。
セフィーロに眼鏡ってあるんでしょうか・・・。
何はともあれ、風ちゃんお誕生日おめでとう!
▽君が見つめる世界を読む
「フウ?」
二人でお茶を楽しんだ後の洗いものを終えた風が眼鏡を外していた。
「どうかしたのか?」
初めてあった時からずっと彼女はそれを掛けていた。
それがないと周りがよく見えないのだと、いつだったか話していた。
「あ、いえ、洗いものをしているときに泡がとんでしまって」
そう言いながらポケットからハンカチを出し、丁寧に眼鏡を拭くと再びそれは風の顔に収まった。
ソファーの背もたれから半ば乗り出すように眺めていたフェリオは、ふと何か思い立ったのか風に向かって手招きをした。
「…?どうかなさいました?」
「それ、貸してみてくれないか?」
「え?…眼鏡を、ですか?」
「そう、そのメガネってやつ」
招かれるままにソファーの隣に腰を下ろした風は、思いがけない申し出に目を丸くした。
そのお願いをした当の本人は風の驚きを余所に好奇心を隠そうともせずじっと風を見つめている。
フェリオは眼鏡を見ているのだと解っていても、視線が自分の顔に向けられていることに変わりはなく、風は火照る頬から視線が逸れてくれることを願って掛けていた眼鏡を差し出した。
「フェリオは目が良いんですから…眼鏡を掛けたら気分が悪くなるかもしれませんよ?」
「そうなのか?………うわ…何だこれ…」
風の話は耳には入っているのだろけれど、好奇心には勝てないようでフェリオは躊躇いなく眼鏡を掛け、風の予想通りの反応を返した。
「言いましたでしょう?」
「…ああ…世界が回ってる…」
表情ははっきり見えないものの、声の感じからして盛大にしかめっ面をしてるのだろう。
簡単にその表情が描けてしまい、風はくすくすと笑みを零した。
「ふふ…じゃあ返して下さいな。私眼鏡がないと周りが良く見えないんです」
「俺も見えてないのか?」
「遠くは全く見えませんが…フェリオなら何とか…でもはっきりは見えませんわ」
少し困ったように笑う風を見て、フェリオは大人しく眼鏡を外した。
けれど外した眼鏡は本人に返さず机の上に置き、戸惑いを見せる風に向き直った。
「あの…フェリオ?」
「近くなら見えるんだよな?」
「え?…ええ、まあ」
そうか、と笑みを浮かべたフェリオは風の腰に手を回すと自分の元へと引き寄せ、そっと唇を重ねた。
「見えないなら、俺の側から離れなきゃいい。だろ?」
君が見つめる世界
至近距離で悪戯っぽく片目を瞑って見せるフェリオの表現が見えたのか、キスのせいか、風は頬を真っ赤に染めてフェリオの肩に顔をうずめた。
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