甘い午後
2008.06.07 |Category …小説~亜久野SS~
自分でケーキを作って、脳内麻薬が大量に分泌されて生まれたSS。
たまーに、ひたすら甘いのを書きたくなるんです。
▽甘い午後
セフィーロが平和になってしばらくが経ち、光たちが持ち込んだイベントや習慣、食べ物が随分定着した。
ケーキもその一つ。誕生日やクリスマス、他にも日常のちょっとした祝い事やおやつにも欠かせないものとなっていた。
「ん、美味い」
ある昼下がりのお茶の時間。
フェリオと風の間にはテーブル。
そこには風が作ってきた紅茶のシフォンケーキが切り分けられて置かれ、お茶の用意がされていた。
テーブルの中央に置かれた、二人分だけなくなっているホールのケーキをフォークでつつきながらフェリオは笑みを浮かべた。
「もう…お行儀が悪いですよ?クリームが出来るまでもう少し待って下さいな」
カシャカシャと一定のリズムでクリームを泡立てながら、風は少し困ったように微笑み返す。
「悪い悪い、美味そうで眺めてたら待てなくなってさ」
「もう…フェリオったら…」
困ったような表情は変わらないものの、言葉に嬉しさを滲ませて呟くと、風は泡立てるのを止めて少し熱を持った頬を隠すようにフェリオから視線を外し少し俯いた。
「…あ、風」
「はい?」
「ちょっとそのまま、ストップ」
風の視線を追って、同じく視線を下げたフェリオはあるものを見つけて風に静止をかけた。
立ち上がりテーブルに身を乗り出して、フェリオは固まる風の泡だて器を持つ手を取った。
「ほら、クリームついてるぞ。泡立ててる時にとんだんだろう」
「まあ…気づきませんでした。ありがとうございます」
フェリオの指摘で初めて気が付いたのか、風は持っていたボールをテーブルに置き、ポケットからハンカチを取り出した。
「勿体無い」
「…え?」
何が勿体無いのかを風が理解する前に、フェリオは風の手から泡だて器を取り上げ、クリームのついた部分に口を近づけると、ぺろっとクリームを舐め取った。
そしてそのままオマケと言うように手の甲に口づけを落とすと、ようやく手を離し、真っ赤に頬を染めて硬直する風に悪戯な笑みを向けた。
「ケーキも美味いけど風も美味いな」
甘い午後
クリームがふんわり泡立つように、胸の想いもふんわりと膨らむ。
甘いケーキと甘い君と過ごす、甘い午後。
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